シルバー会の事

日本に帰る日は9月29日
あと1カ月
初めから2年限定のつもりで赴任した夫は
延長する気にはならなかった
頑なにそう決めていたらしい
仕事は決してきらいではないが
( むしろ仕事人間 )
それ以外の煩雑な雑務が
技術やさんの彼にはかなり負担になっていたのだと思う
孤軍奮闘頑張っていたのを見ていたので
この選択は正しいだろうと思う
定年で辞めるつもりの
おまけの2年を
まさかの海外で送れた事は
私たちがもらったご褒美だと思う
いい時間だったね、二人ともそう
思えるのは本当に幸せだ
ここでの時間を楽しめたのは
シルバー会のおかげでもあるいわゆる日本人会とは別に
ストックホルム日本人シルバー会という会があるのを知ったのは
ストックホルムに来て数週間後私は夫としか日本語の会話がないし
スウェーデン語はチンプンカンプン
今のように慣れていなくて
英語も図々しく話せなかった
何とかしたいと
ネットでシルバー会がある事を知り
数日後に散歩会があるということを知ったとにかくおしゃべりしたい
ネットワークも作りたい
散歩会に参加したいと出したメールに
すぐに温かい返信が届いた

訳もよくわからないけれど
集合場所に行った私たちを
本当に気持ちよく迎えてくれて

あの時、どんなにうれしかったか
ストックホルムの生活が
何とかやれそうな
そんな気がしたのだ

シルバー会は
ストックホルムに住む高齢者の集まりだけど話を聞けば聞くほど
ひとりひとりの人生が
あまりに劇的
若かったからね〜なんて
言われるけれど
いまから40年、50年前に北欧に来て
ここでずっと暮らしてきた事実
お話するだけで
いっぱいの刺激
みんなそれぞれ自立して
しかも優しい

日本人会でなくシルバー会が
生まれてくるという必然も
私には興味のあったところ

高齢化がますます加速する日本でも
家族に頼るのでなく
お互いがお互いにできる援助をしあうことが大事な事なのだと
漠然と思ってはいたけれど
何かヒントがあるかもしれない
シルバー会の存在

母の介護から
見え隠れした
個人の意識のあり方

私には日本での私のこれからのあり方を
ちょっとぼんやりとだけど
教えてもらえたような気がする

ヨガもマッサージも
シルバー会に出会えたらこそ、
そしてそこから広がっていたたくさんの
出会い

散歩会で知ったストックホルムの決して観光ではわからなかった
綺麗な風景

みんなでワイワイ食べるお弁当の光景
日本でもなかなか見られない

忘れているのではないかな
今の日本
これだよ
ここに戻ろうよ

ここで暮らしている人たちとこんなに
つながれるとは正直思わなかった

本当に楽しかったし面白かった
夫と夕べ話した

まだ過去ではない
まだまだ楽しむ時間はある

* 山川澄代 *
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