今週の映画会「警察日記」

筆者が子どもの頃、家族の一員に映画に連れてゆかれ観た映画で最後のシーンをはっきりと覚えている場面があり、最近になって増々クッキリと眼前に浮かぶ光景があります。題名は覚えていない、俳優は確か三国連太郎、伊藤雄之助が出ていたと。今の情報時代をフルに活用してそれだけが頼りで探しました。そしてついにこの映画にたどり着いたわけです。結果をすぐに申します。違う、ちがう、チ〜ガーウッ!もっと悲しい映画だった。イタリアのネオリアリズム映画(自転車泥棒、鉄道員、にがい米、等)の影響が日本の監督等にも波及して、社会の底辺に生きる人々を深刻に描いた作品が多く世に出された頃の作品だった。もちろんこれは後で調べたその頃の映画界の動きですが、社会主義の影響大の時代でした。それはそれとして、別に自分の中にある最後の場面。左側場面から入ってくる蒸気機関車の角度がチガーウッ!スクリーンの3分の2くらいを占める田園の遠景、真っすぐな地平線。最初は音だけが段々と近づいてくる。その音が機関車の音だとわかり、身近に聞こえるようになったとき、突然一本の筋となって画面の左側から汽車が入ってくる。黒煙をモウモウと空に吐きながら徐々に徐々にゆっくりとスクリーンの真ん中に一直線に近寄っていく。その場面に覆い被さるようにある民謡がアカペラで朗々と歌われる。”新相馬節”だったか”南部牛追い唄”だったか、、、”はるか彼方は 相馬の空かョ~ ナンダコラヨ~と””田舎なれども~ハァ~南部の国はよぉ~で始まる唄のどちらかだったか、、、あまりにも悲しい結末だけれど一縷の希望を繋げる為にか、東京の遠い親戚に貰われていく男の子の未来に託すように力強く前進する機関車。その上に”終”の文字が出た。子どもながらそれははっきりと脳裏に刻まれ、監督の意図も感じられた。しかしその映画はボクにとってとうとう幻の映画になってしまったわけです。ヒョッとするとボクの脳内での想像だけの映画かもしれない。。。まぁ、それはそれで善しとしましょう。と言うわけで長い前フリの後で、この映画「警察日記」の解説に入ります。これはこれで悪くない。この頃の映画ですから当然、名俳優、迷俳優が出演してます。三国連太郎、三島雅夫、十朱幸雄、左卜全、殿山泰司、伊藤雄之助、杉村春子、飯田蝶子、三木のり平、東野英治郎等まだまだ。特に新人として、頬の移植手術以前のガリガリの宍戸錠が新米警官の役で出ています!おしめを替えている写真の左端の警官がそうです。しかし、この映画で見所と言えば、なんと言っても子役の”二木てるみ”でしょう。4歳くらいのときですが、これで天才子役という名声を得ました。彼女の頬を伝う涙を観てもらい泣きをした観客も多かったことと思われます。今でいえば、”日本中が泣いた”というイヤラシイ表現になりますけど、この演技をヤラれたら大人の俳優はどうなんでしょう?どんなに名演技しても子役にカッさらわれるわけですから。それかどうか、森繁の例のオトボケ調子が今ひとつの感がします。1955年は俳優としての森繁久彌の当たり年で「夫婦善哉」(この映画もシルバー会で入手してあります)も封切られています。

 

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