一月三十一日の映画会

無声映画から総天然色と映画会社が隆盛を極めて行く段階で、当然のごとく芝居が出来る歌舞伎役者が即戦力として多勢、映画会社に移って来ます。歌舞伎界は長年培われてきた堅苦しい伝統や、名跡・正統といった厳しい世界ですから、美男でありながらも本家からハズれた家に生まれた若者や演技に自信のある役者はこぞって新天地に運命を掛けました。一度、降りたら帰れないという背水の陣で望んだわけです。嵐寛寿郎、市川右太衛門、大河内伝次郎、片岡千恵蔵、月形龍之介、長谷川一夫、阪東妻三郎、中村錦之助、中村賀津夫、市川雷蔵、大川橋蔵等々。東千代之助(日本舞踊)と勝新太郎(長唄三味線)はちょっと異色で、失敗しても帰るところがあるからおっとりしていると言われたりしてますが。しかしこの中で異色なのは四代目河原崎長十郎でしょうか。1928年の歌舞伎モスクワ公演で共産主義を身を以て体験し、その後、毛沢東主義に傾倒、前進座の坐員70名と共に共産党入党。日中共産党の対立により日本共産党から離党。幾多の紆余曲折の後、日中友好の架け橋となる演目を上演しつつ1981年に死去するという波瀾万丈の人生でした。なんかスゴいというか、己の信じた思想に沿って演技と生活を、という人生を全う出来た人であったのかな、と。で、この人が大石を演じた「元禄忠臣蔵」。溝口健二監督作品です。1942年度ですから戦中作品、勇ましさを要求される時代にあって剣を抜く場面が一度もない、という面白い作品です。そして観るものを引き込みます!

ところで今回お見せする58、59年度の「忠臣蔵」。長谷川一夫と片岡千恵蔵がそれぞれ大石内蔵助を演じています。まあ、なんと言ってもリアリティよりも虚構の伝説性ってんで、長谷川一夫の燃えるような目で「南部坂雪の別れ」をヤラれちゃあね。山本富士子じゃなくっても、みんなあれでまいっちゃう!「華(はな)」というものを熟知した役者でしたね。

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